受験生の皆さんへ

応用理工学類とは

 皆さんは、大学の工学部や理学部に進学して科学や技術について学ぶことを強く希望されているでしょう。筑波大学の応用理工学類は従来の工学部とは異なる取り組み方で、速い速度で進歩し変わりゆく社会からの要請に答えようとしています。
 応用理工学類で学ぶ内容は、他の大学では応用物理、材料工学、電子工学、応用化学などの学科に入っていた分野です。簡単に言うと従来の工学部の中から自然界から人間に役立つ物質や現象を引き出し、工業に役立つ形の材料や素子、計測技術などに仕上げる部分を集めました。そこで自然に存在する原子や分子などの振る舞いを理解して、新たな材料を合成し役立つ性質を作り出したり、分析や計測手段として利用します。この目的のために、科学を基礎として学び、原子、分子の挙動や物質と電磁波・光との関係などミクロな視点で世界を理解すること(ミクロサイエンス)を教育目標の一つとします。
 人類は昔から自然界から多くの恵みを得てきました。現代の自然界からの恵みは科学を通して技術としてすぐに人間に届きます。自然に存在する物質に手を加えて人工物質(高分子、半導体、合金など)を作り、新しく役立つ性質(機能)を作り出すことができます。また自然現象を利用して、物質の性質を調べたり、医療検査などに使うことができます。
 未来の社会を豊かにするために社会の工学、技術への要求は、IT、省エネルギー、福祉や医療へと拡がりつつあります。要求を満たす工業製品を作り続けるには今までにない機能を見つけて、本当に役に立つ材料や素子を作る必要があります。応用理工学類は、現在の社会の要請に応えるだけでなく、科学・技術を基礎にして新しい機能を提供して未来の工学に対しても、重要な役割を果たします。 
 

アドミッションポリシー(入学者選抜方針)

 応用理工学類では「ものごとや現象を単なるブラックボックスとは考えずに原理・原則から理解し、先端科学技術について、現代物理学・化学等を通じて基礎からのアプローチに興味を持つ人材」を求めています。
 

科学、技術と工学

 「必要は発明の母」という言葉があり、技術や工学を説明するのによく使われています。社会の要求に後押しされて技術は進歩し、それを工学と呼びます。快適な生活を送ること、高速の交通機関、労働時間の短縮など社会の要求に対して、工学が応えてきたのです。
 大学の工学部は社会の要求を満たすために技術を発展させる事を目的としています。一方、技術と深い関係にある科学は、従来は主に理学部が担当していて、学問的な取り組みが中心になると考えられていました。しかし現代の技術は科学を基礎として成り立っているので、切り離す事ができません。両者の間隔は次第に小さくなっているのです。
 

工学のとらえ方

 ここで応用理工学類の担当分野が技術や工学の全体でどの様な役割を果たすかを少し詳しく説明します。具体的な技術(工学)の成果は工業製品です。自動車や携帯電話などは身近に目につく例で、多量に作られて世の中に氾濫しています。飛行機や新幹線などは少数派でより複雑なものですが、非常に役立っています。一般的に工業製品は単純な物ではなく、いくつもの要素で成り立っているのです。
 たとえば携帯電話を例に取れば、人間に触れる部分として、ディスプレー、キー、アンテナそれに写真撮影用のカメラなどがあり、情報を伝える役目を果たしています。さらに内部を調べると電話局との通信のための高周波電子回路、アンテナ、それらを働かせるための電池、写真撮影用CCDカメラなどそれぞれ目的を持った「部品」で構成されています。この部品は電話だけではなく他の製品にも同じ機能を使う部分で使われます。
 この部品はさらに小さなもの「素子」で作られています。例えばコンピューターのCPU、メモリなどのLSIと呼ばれる半導体素子がおもな「素子」です。素子にはそれぞれ利用される性質があり、光を発する発光ダイオード、電波をつくるトランジスタ、画面用の液晶や有機EL等、マナーモードに使う振動を低電力で作るのも「素子」です。
 さらに「素子」を眺めてみましょう。半導体素子はシリコンなどの材料を非常に小さく加工する事により作られます。金属材料、プラスチックやガラスなども「マテリアル」(材料)として使われています。
 これで工業製品を作る過程の最上流にたどり着きました。これを小さなものから逆にたどると次のように表せます。 

 

筑波大学での工学の分担

 従来の工学部は主に製品の種類によって電気、機械、建築、土木、応用化学などに分類されています。分野によってはそれに関する材料からシステム(製品)まですべてを網羅している所もあります。筑波大学では、このような個々の分野により分類するのではなく、技術の種類によって分担しています。
 すなわち筑波大学の工学分野(主に理工学群)では、マテリアル(材料)、センサー素子、電子素子や基本的な測定原理の開発などを応用理工学類が担当します。それらを組み合わせてより大きな「部品」から「製品」を形成する部分は主に工学システム学類が担当します。また多くの工業製品は人間がいかに使うか、何を要求しているかを論理的に組み立てる必要があります。人間の知りたい事を集めたり、分析したり機械との橋渡しは情報学類が担当します。さらに人間の活動自体を工学の見方から解析し、情報として抽出するのは経済学、都市計画などを主体に社会工学類が担当します。これらの分野は工学を完成させるのに必要で、どの部分が欠けても技術や工学の発展はありません。筑波大にはさらに国際的な関係を勉強する国際総合学類があります。
 

応用理工学類の役割

 新しい考え方に基づいた応用理工学類の役割は、自然界から人間に役立つ物質や現象をみつけだし、それを役立つ形にまで仕上げることです。もう少し詳しく言うと、自然に存在する物質に手を加えて人工物質(高分子、半導体、合金など)を作り、新しく役立つ性質を作り出します。その性質を利用可能な「素子」として、基本的な機能を利用できるように完成させます。
   また、自然には様々な物理現象や化学現象があります。これらを人間のために役立つ、計測技術等に導くのも役割の一つです。
   応用理工学類は上記の様な役割を果たすために、4つの分野=「主専攻」
   

応用物理主専攻、

電子・量子工学主専攻、

物性工学主専攻、

物質・分子工学主専攻
  を設けています。
   
  [ナノテクノロジーと応用理工学類]
   今までの説明で分かるように、応用理工学類では原子や分子のレベルから物質や現象を扱います。このため最近話題になっているナノメーターサイズの技術「ナノテクノロジー」は当たり前のことになっています。ほとんどすべての研究がナノテクと関係していると言っても間違いではありません。このような小さなサイズでは、素子やマテリアルそのものがシステムと直結する技術分野が新しく必要となり、研究が盛んです。
   
  [社会の要求と応用理工学類]
   現在社会で必要とされている具体的な技術(工学への注文)は、高齢化社会の到来に対する対策、エネルギー問題などです。これらの問題を解決するのに応用理工学類は直接的には関係していないように見えます。しかし、マテリアルや素子の発展は、燃料電池や太陽電池の開発などを通じてエネルギー問題の解決のために大きく貢献しています。物理現象の医療分野への応用も得意分野の一つです。磁気共鳴映像法(MRI)や粒子線による治療などは直接、医療に貢献しています。
   
  [将来の工業を支える応用理工学類]
   現在、利用されている材料、現象の研究を続けても、技術開発の種はつきてしまいます。豊かな社会を将来、維持発展させることを考えるならば、10年、20年後の工業の基礎となる素子やマテリアルの研究を始める必要もあります。応用理工学類では、自然科学の中からこのような将来性のある現象や物質について学び、研究の対象とします。「超伝導」「プラズマ物理」「生物機能」など、未来の工学の基礎となる事がらの種をまき、育てています。
 

応用理工学類の教育と主専攻 -入学から卒業まで-

 入学から卒業までを簡単に紹介します。通常の大学では単位制を取っていて、受けたい科目を申請して授業を受けて試験に通れば、単位と成績が与えられます。応用理工学類では4年間に、125.5単位以上取れば卒業できます。ただし必ず取らないといけない「必修科目」や科目のグループから選択する「選択科目」、取得の時期など、かなり複雑なルールがあります。高校のように自動的に手続きが進むことはないと考えて下さい。
 1,2年生では学類全体で共通性の高い基礎的な科目を勉強します。応用理工学類では特に重要な科目について、60人程度のクラスできめ細かな授業を行っています。講義と演習を組み合わせた授業で、宿題や小テストで自分の理解度を判断できます。春及び秋学期に一度の試験では理解度を確認することができませんが、このシステムなら常に自分の理解度が確認できます。もちろんそのあとの対策が大切ですね。
 基礎的な科目だけでなく、これから進む専門分野の理解を深める導入の授業科目を設けました。1年生では「フレッシュマンセミナー」(ホームルームのような授業)において体験研究室配属で研究室の雰囲気を体験します。「応用理工学概論」では工学と本学類の関係、技術者の社会的な責任等を学びます。2年生では基礎的だけど専門性の高い教科が数科目受講できます。
 3年生になると、4つの分野=「主専攻」に分かれて専門性の高い学習が始まります。主専攻ということばから判るように、主に専攻する分野を定めるであって、他の専攻も「副」専攻として関係の強い分野です。

 応用物理主専攻 物理学を基礎として光、電磁波、粒子線を応用した最新の計測技術、フォトニクス技術を学ぶ
 電子・量子工学主専攻 電子の関わる物理を基礎として、量子効果、微細加工を応用する新しいエレクトロニクスを学ぶ。
 物性工学主専攻 物質の性質を物理の視点から捉え、将来の技術を支える新しい機能を持った物質開発手法を学ぶ。
 物質・分子工学主専攻 化学や物理を基礎にして、分子の概念、高分子や生物の機能を理解し、新しい有機材料を学ぶ。

 4年生では通常の授業に加え、研究室に配属されて卒業研究を行います。3年生までの授業中心の生活から、研究室での生活に一変します。すでに明らかにされた事柄を、講義を受けて学ぶ「学習」から、それらを利用して新しい価値を見いだす「研究」の手法を学び、さらに大学院での研究に発展させます。この研究の成果を論文としてまとめ、2月に卒業研究発表会で発表して、無事卒業となります。卒業後は80%以上が対応する大学院、数理物質科学研究科の電子・物理工学専攻と物性・分子工学専攻に進学します。