酵素の力を効果的に引き出す新材料を開発しバイオセンサー性能を飛躍的向上させることに成功 辻村教授ら
本研究チームは今回、「金属有機構造体(MOFs)」という特別な材料を使うことで、この課題を解決しました。MOFsは金属と有機分子が組み合わさってできた、細かい網目のような構造を持つ材料で、ガス吸着などの分野で利用が進められています。MOFs自体は電気を流しませんが、この表面に電子を流す材料(メディエータ)を修飾しました。修飾した材料は、酵素と電極の間で電子をスムーズにやり取りできる「電線」のような役割を果たしてくれます。さらに、MOFsの設計に工夫を加え、酵素が働く場所(活性部位)に電子が届きやすくなるようにしました。また、酵素が壊れたり、測定が不正確になったりしないよう、ナノスケールにおける適切な構造を確保し、そこに酵素を保持できるようにすることも重要なポイントでした。
この新しい技術により、従来よりも効率的で長期間にわたって安定して計測できる酵素センサーが実現できるようになりました。将来的に病気の診断や環境のモニタリング、さらには持続可能なエネルギー技術など、さまざまな分野で活躍する可能性がある成果です。本研究チームは、今回の研究が科学の進歩だけでなく、人々の暮らしをより良くする一助になると信じています。