Vol.6 山下 雄大
応用理工学類卒業
数理物質科学研究群修了
日本電信電話株式会社 NTT物性科学基礎研究所

進学先として筑波大学を選んだのは、国公立大学の中で、研究環境や教育体制が充実していながらスポーツにも本格的に打ち込める環境が唯一無二だと感じたからです。私は関西出身で、まわりに筑波大学出身の人はあまりいなかったので、それ以外のことは「行ってからのお楽しみ」くらいに思っていました。
漠然と将来は理工系を専門にしたいなと考えていた私は、「物理や化学を幅広く学べる」という謳い文句に惹かれて応用理工学類を選択しました。応用理工学類は、量子力学や材料科学などの基礎的な知見を、現実世界の問題解決や技術開発に結びつける学問領域です。そのため、応用理工学類の扱う対象は専攻や研究室によってさまざまですが、一歩基礎に立ち返ると、常に自然科学が相手になる点は共通しています。人が定めたものを相手にするわけではないので、理学が好きな人にはとても魅力的に感じられるのではないでしょうか。私自身は、当初授業に熱中できておらず、幅広く学ぶなかでそれぞれがどう結びついているのかが見えずに戸惑うこともありました。しかし、実際に研究室に配属されて実験結果を考察する立場になった瞬間、これまでの伏線がすべて回収されるかのように「あの授業で習ったことはこういう意味だったのか!」と、講義で学んだ理論や技術がどんどんつながっていきました。以来、私はこの分野の面白さにすっかりハマり、博士後期課程まで進学した後、現在は神奈川にあるNTT物性科学基礎研究所で半導体材料の研究に取り組んでいます。実際の研究や技術開発は、複数の分野が絡み合ってこそ進歩するものです。応用理工学類で物理や化学を横断的に学んだ経験が、いまの自分を支えてくれていると感じます。
大学に入る前は、明確な目標がないことを不安に思うかもしれませんが、多くの学問分野が一つのキャンパスに集まっている筑波大学なら、自分の予想を超えた世界と出会うチャンスがあります。私自身、入学当初は漠然と「何か理工系をやろう」という程度でしたが、学びの幅が広いおかげで自分の進みたい道を見つけることができました。多種多様な人々との交流は、きっと高校までは想像できなかった学びと成長をもたらしてくれるはずです。皆さんの進路が実り多いものになるよう、心から応援しています。