多結晶ゲルマニウム薄膜の性能を飛躍的に向上 都甲教授ら
情報化社会の進展に伴い、半導体デバイス性能の革新が求められています。ゲルマニウム(Ge)は、光検出器や高効率太陽電池の基板材料として広く利用されているほか、高いキャリア移動度を有することから、既存の主要半導体材料であるシリコン(Si)に代わる高性能トランジスタの材料としても注目されています。ガラスやプラスチックといった絶縁体上に高品質なGe薄膜を形成できれば、高性能な薄膜トランジスタを用いたディスプレイ端末や三次元 LSI(大規模集積回路)、さらには低コストかつ高効率な薄膜太陽電池の実現も期待されます。
都甲教授らは、ガラス基板上に大きな結晶粒をもつ多結晶 Ge 薄膜を形成した上で水素添加を行うことで、Ge 薄膜の正孔密度が劇的に低減する現象を発見しました。さらに、水素添加した Ge 薄膜に対して低温(200°C)で追加熱処理を施したところ、水素プラズマ処理時に生じる Ge 薄膜の表面ダメージを回復することに成功しました。その結果、高い正孔移動度(170 cm2 /Vs)を維持しながら、従来比の 3 桁減となる 10^14 cm-3 台の正孔密度を達成しました。
本研究成果は、多様な Ge 系半導体デバイスの性能向上に大きく貢献することが期待されます。また、本手法は最高プロセス温度が低温のため、ガラス以外のフレキシブルなプラスチック基板上への展開も可能であり、ウェアラブルデバイス をはじめ、壁面や さまざまな物体に貼り付けて利用できる新たな電子デバイスの実現に資すると考えられます。