免疫グロブリンAを安価で簡便に精製できる技術を開発 白木教授ら
免疫グロブリンA(IgA)は、からだの粘膜表面に多く存在する免疫タンパク質の一種であり、ウイルスや細菌からの感染を防ぐ効果をもちます。経鼻投与などによって簡便に利用できる感染症予防薬(IgA 医薬品)への応用が期待されていますが、実用化には至っていません。その要因の一つが、IgA の純度を高めるために行われる「精製」工程のコストです。医薬品として利用するためには、高純度の精製が必要不可欠です。しかしながら、IgA の精製には、IgAを特異的に吸着するように設計された高価な有機材料を用いたカラムが主に用いられており、それが生産コストの増加につながっています。
白木教授らは、安価な無機材料であるジルコニア粒子を用いた IgA の新しい精製方法を開発しました。この方法では、ジルコニア粒子を充填したカラムに未精製の IgA 溶液を流し、pH や塩濃度を調整することで、IgA を選択的に回収することが可能です。使用する溶液の pH は弱酸性から中性の範囲であるため、IgAの構造や機能に与える影響を最小限に抑えることができます。
本研究結果は、ジルコニアは天然に豊富に存在する安価な材料であるため、従来の精製方法と置き換えることで、生産コストの大幅な削減が見込まれます。本技術は、IgA 医薬品の研究開発や実用化を加速させ、感染症の予防やパンデミック対策に貢献することが期待されます。