シリコンに注入した水素が自由電子を生成するメカニズムを解明 梅田准教授ら

 カーボンニュートラル社会の実現に向けて、パワーエレクトロニクス機器の高効率化や省エネルギー化が世界中で活発に進められています。中でも、シリコン(Si)を使った絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)は、それらの機器を動作させるために不可欠な電力変換を担うキーデバイスであり、その変換効率の向上が課題となっています。IGBTでは、水素イオンをシリコンに注入して電子濃度を制御する技術が実用化されていますが、この現象は約半世紀前に発見されたにもかかわらず、その原理は長らく解明されていませんでした。

 梅田准教授らは、以前、シリコン中の電子濃度の増加に寄与している複合欠陥を発見し、それが格子間シリコン対と水素の結合により形成されることを明らかにしましたが、その過程で自由電子が新たに生成する理由は不明でした。今回、この複合欠陥に着目し、第一原理計算などを行い、複合欠陥中で水素がどのように存在するかを明らかにしました。また、この複合欠陥から自由電子が生成していることを裏付ける理論として、水素が電子を放出する理由や、電子がシリコン中で自由電子となるメカニズムも解明しました。さらに、本理論の拡張により、将来のパワー半導体用材料として期待されていながら、電子濃度制御が非常に困難なダイヤモンドに当該メカニズムを適用できる可能性を示しました。

 今回解明したメカニズムをダイヤモンドなどの電子濃度制御が困難な超ワイドギャップ半導体材料へ適用し、パワー半導体をはじめ高周波デバイスや量子センサーなどに活用することで、カーボンニュートラル社会の実現に資する半導体デバイスの開発を目指します。