AIの力で複雑なスペクトルの自動解析が可能に! 近藤教授ら

 窒化ホウ素(BN)は、ホウ素(B)と窒素(N)から構成される化合物で、層状構造(h-BN)、立方晶構造(c-BN)、ウルツ鉱型構造 (w-BN)などの多様な結晶構造を形成します。優れた電気特性や化学的安定性を併せ持つことから、半導体デバイスをはじめ電池や触媒など幅広い分野で注目されている先端材料です。

 BN のX 線吸収分光法(XAS)測定により得られるスペクトルでは、h-BN、c-BN、w-BNといった結晶構造の違いや、結晶中の空孔、不純物などの欠陥により、ピーク位置、強度比、微細構造が複雑に変動します。そのため、XAS スペクトルを正確に解析するには、結晶学、電子物性理論、分光学など広範な分野の専門知識が必要です。特に大規模データセットでは、各スペクトルを詳細に目視で確認し、特徴を手作業で抽出する必要があり、多大な時間と労力を要します。このため従来法では、客観的かつ効率的な解析が困難でした。

 近藤教授らは、教師なし機械学習を用いた自動解析手法(UMAP)を開発し、先端材料であるBNの結晶構造と電子構造を結びつけたところ、高次元の XAS データを結晶構造や欠陥の種類に応じて正確に分類できることが判明しました。また、従来の主成分分析や多次元尺度構成法よりも、複雑なスペクトルの本質的な特徴を捉えるという点で優れていることが明らかになりました。さらに、詳細解析により原子の結合状態やわずかな電荷移動の違いを識別できることは、これまでにない画期的な成果といえます。そして、開発したモデルがシミュレーションデータのみではなく、実験データにも適用可能であることも実証しました。

 本研究成果は、スペクトルデータに対する自動的な物性解析の可能性を示すとともに、データ駆動型材料設計の新たな道筋を提示し、材料開発の加速に寄与するものです。