植物オイル「リモネン」中での高効率不斉合成に成功 後藤准教授ら
医薬品や化粧品などに⽤いられる分⼦には、鏡像異性体が存在するものが多くあります。こういった分⼦を不⻫合成する際は、⽬的とする鏡像異性体の⽣成を精密に制御しなくてはなりません。このような不⻫合成に使われる代表的な⽅法の⼀つが光延反応です。しかし、副⽣成物である酸化フォスフィンは結晶性が⾼く、また⽬的物と化学的性質が似てしまうことが多いことから、反応後の分離精製が困難であるという課題がありました。
後藤准教授らは、末端にカルボン酸をもつ芳⾹族誘導体と光学活性なアルコールに対して、光延試薬であるジイソプロピルアゾジカルボキシレート(DIAD)とトリフェニルフォスフィンを添加し、リモネン中で攪拌しました。原料の芳⾹族誘導体とキラルアルコールはいずれもリモネンには溶解しませんが、これにDIADを等圧滴下ロートにてゆっくり加えると反応が始まり、原料がリモネンに溶けます。反応がさらに進むと、副⽣成物の酸化フォスフィンが沈殿します。得られた化合物 は、99%以上の⾼効率で鏡像異性体の⽴体反転が⽣じていることが確認できました。
リモネンはすでに、接着剤の溶剤や洗浄剤として活⽤されていますが、本研究のような反応溶媒としての⽤途に関する報告はこれまでになく、さらなる有効利⽤が期待されます。また、この反応の成功は、さまざまな有機合成を、リモネンにとどまらず、多くの天然溶媒中で⾏うことのできる可能性を⽰唆しています。今後は、本反応を⽤いた液晶の合成など機能性物質の創成や、他の化学反応におけるリモネン活⽤の検討を進めます。

